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監査役の覚悟24 沈まぬ太陽

ブログでJALの倒産について書いた事がある。
しかし、月刊監査役2月号で「沈まぬ太陽」が「監査役の物語」として紹介されたので読んでみると、旧JALの問題の根深さに寒くなる。
沈まぬ太陽

まずJALの歴史を整理する。
1951年 半官半民で設立
1955年 国内線、国際線とも黒字化
1972年 運輸大臣通達によりJALが国際線と国内幹線、ANAが国内幹線とローカル線と住み分けされた。
1972年 ニューデリー(90名死亡)、モスクワ(62名死亡)などで連続事故
1974年 系列ホテルの開発と運営を行う日本航空開発を設立
1982年 羽田沖事故(逆噴射事故、24名死亡149名重軽傷)
1985年 御巣鷹山で123便墜落事故 乗客524名中520名死亡
1985年 1972年の産業保護政策が廃止され、国内ローカル線にも参入
1985年 政府からの強い要請で鐘紡会長伊藤淳二氏が副会長に就任。社長は総務庁事務次官の山地進
1986年 伊藤会長が常勤監査役に調査を依頼。
     監査役は子会社のホテル事業、長期為替先物予約の問題点を監査報告で指摘。
     監査役は子会社の地方バス会社社長に更迭

1987年 伊藤会長辞任(日本航空昔話
1987年 完全民営化、ホテル、レストラン、教育、IT事業を積極展開
1992年 海外ホテル投資や燃料先物取引の失敗、人件費の高騰などにより、経常損失538億円
1995年 不採算路線の廃止、契約乗務員の導入、海外渡航者の増加などにより、経営状況回復
1998年 株主優待券の不正流用などによる暴力団や総会屋との関係が発覚
2001年 アメリカ同時多発テロにより旅客数が落込み、経営悪化
2002年 持株会社日本航空システムを設立
2004年 日本エアシステムを統合「聖域なきコスト削減」
2006年 株主総会二日後に37%2000億円の公募増資を発表、1400億円しか集まらず株価が下落
2007年 航空アライアンス「ワンワールド」への加盟、経常利益が好転
2008年 世界同時不況、原油高、新型インフルエンザ、改善しない人的コストにより再び経営悪化
2009年 「経営改善のための有職者会議」設置したが、頓挫
2010年 会社更生法申請、上場廃止、機長組合など反社側5組合の160余名を整理解雇
2010年 企業再生支援機構が支援、稲盛氏が会長に就任

「沈まぬ太陽」については、事実とかなり違うとの批判もある。日本航空社内報
小説「沈まぬ太陽」余話Ⅰ、余話Ⅱ、余話Ⅲに双方の意見が掲載されている。
作者の山崎豊子さんへのインタビュー記事乗員組合ニュースも参考になる。
主人公の恩地さんのモデルになった小倉寛太郎さんの講演会も興味深い。
また、小説の登場人物とそのモデルを対比させたページを見て小説や映画を見ると数倍面白いと言うか、現実の物として背筋が凍る。

どちらの言い分が正しいのかは分からないが、歴史を見る限りにおいて、日本航空にも組合にもかなりの問題点があったことは事実のようだ。
そんな状況の中で、監査役が監査報告書で、会社としては隠したい重大リスクを指摘された勇気に敬意を表したい。
山崎豊子さんはゲーテの次の言葉を座右の銘にしていると言う。
金銭を失うこと。それはまた働いて蓄えればよい。
 名誉を失うこと。名誉を挽回すれば、世の人は見直してくれるであろう。
 勇気を失うこと。それはこの世に生まれてこなかった方がよかったであろう
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監査役の覚悟23 監査役の有効性

 監査役は株主総会の決議によって選任され、取締役の職務執行を監査します。
 16世紀の大航海時代において出資者に決算の適正性を立証するため監査官が航海に同行し船長を監視し、日本の江戸時代においても大目付が大名を監視したように、不正がないか監視し不正があれば報告するのが監査役の役割です。
 監査活動によって、従業員の過失や不正を発見した時は、それらを正す事によって会社の業績も上がるでしょうから、それを報告し正す事は会社経営陣にとっても非常に喜ばれることです。
 しかし、経営者自身の不正を発見した場合には、状況は大きく違ってきます。
 監査役は株主総会で選任されたといっても実質的には経営者により指名され、会社から給料を頂く立場として、雇用者である経営者を監視し意見を言うのは大変勇気のいることです。
 そもそも故意に不正を行っている経営者は、監査役に不正を諌められて喜ぶはずがなく、蓋をして何も無かった事にしてくれる事を期待するでしょう。
 それでもあえて報告するときには、大目付が殿の行状について意見する時は切腹覚悟で望んだように、監査役も辞任覚悟で対処する事になります。
 正しい事だとしても組合が擁護してくれるわけでもなく、監査役の給料は少し良いと言っても辞めて困らない蓄積がある訳でもなく、この年になって再就職出来る見込みも無く、古くからの会社の友人と袂を分かつ事になる、などなどを切り捨てて路頭に迷うことを覚悟しなければいけないでしょう。
 会社にとっても、監査役に指摘されなければ平穏無事に過ごせる所を、世間に知られて会社の信用を失墜したり、上場廃止など会社存続に関わる事態を招いたりと、大変な状況になりかねません。
 よって、経営者に不正があったとしても、監査活動においても発見出来ない方が監査役としては安穏に過ごせます。また、不正を発見したとしても、それが発覚しないと想定される場合には、不正を見なかった事にしよう、という誘惑に駆られます。

 一昔前だったら、見て見ぬ振りをすることが望まれたかも知れません。
 しかし、全員がボスの方を向いて一丸となって取組んだ村社会は既に崩壊し、内部の問題を外に言うことは恥だと思われていた文化も内部通報の勧めによって言わないことが悪とされ、インターネットや携帯電話によって社外への通報が格段に簡単になっている状況において、監査役に発見された不正が世間に知られるのは時間の問題だと考えた方が良いでしょう。
 そして、不正が発覚したときに、監査役が発見出来なかった場合や発見していたのに報告していなかった場合は任務懈怠に問われ、損害賠償を問われかねません。
 そういった前提の時に守るべきものは何か。言うまでも無く、自分を指名してくれた経営者ではなく、会社の存続です。大目付が殿を諌めたのも、お家大事であり、一刻も早く膿を出しきって不正を正し、会社経営を健全化しなければいけない。
 そう頭の中では思うのですが、実際に有事に遭遇した時に経営者と対峙して毅然と対処できるのだろうか、人間としての生き方を問われる分水嶺であり、まさに監査役としての覚悟が問われる場面ですが、自分自身のこととして考えると全く自信がありません。
 私のような軟弱な監査役が有事に機能するためには何が必要か、もうしばらく考えて見ます。

監査役の覚悟21 株主への対応

株主について書いたブログに対して、別府様から次のコメントを頂きました。

 「株主とは一体、何ぞや?」を真剣に考えておられることに敬意を表します。
 私は、「無視してはいけない、しかし、過剰に反応してもいけない相手」と思っています。株主は千差万別ですから。
 会社は、当事者(経営者、監査役会、社員)が責任を持って運営し、社会に貢献すべき組織です。
 当事者中心の経営は得てして社長絶対のワンマン経営に陥りやすくなりますので、これを監査役会がしっかりと牽制している、と株主に知らせて安心してもらうことが肝要です。
 株主から見れば、監査役会が唯一の頼みの綱です。
 監査役会が機能しておれば、ガバナンスは大丈夫、思いもかけないサプライズ(不祥事、経営破たんなど)は生じないと信頼できますので。
 問題は、監査役会が実際に機能しているのか、機能していることを外部の方が知りえるような情報が発信されているのか、です。
 監査役会の活動を、事業報告、アニュアルレポート、コーポレート・ガバナンス報告書で外部へ発信する、社内では定期発信、社内報などを通じて社員へ伝える努力が第一歩と思います。
 黙って座っているだけで、理解してもらいたい、というのでは、職務放棄です。


確かに、監査役は1年に一度株主総会で監査報告を行うのが大きな仕事であり、普通は特に問題はないので、「報告すべき重要な問題はありませんでした。」とだけお知らせしているのが現状です。
実際には監査報告に至るまでには、各種会議出席、往査、書類審査など様々な活動を行い、必要な事はその場で注意やアドバイスを行うとともに、経営にまで知らせるべき事は報告し改善を求めています。
もちろん法律や定款に違反することがあれば法律に基づいた措置が必要ですが、通常は株主に対して監査活動の細かい内容はお知らせしていません。
その結果として、閑散役だと思われ、機能していないと言われ、いろいろな改革案が議論されています。
私としては、監査役は充分機能しており、現在の監査役制度は適切な仕組みだと思っていますが、陰働きで会社に貢献するのが美徳と思い、細かい指摘や改善された問題点などは、お客さまにも株主はもちろん、社内の他部門にも報告していません。
ご指摘のように、監査役の実施している監査活動をお知らせすると共に、問題があったときに、毅然と対処された監査役の実例を整理し、紹介して行く事により、監査活動が評価され、よりご安心頂けるのかと思います。
ただ、実際に大きな問題に直面したときに、本当に毅然とした対処が出来るのかについては、直面して見なければ分からない、と言うのが本音です。そういったときに機能してこその監査役であり、次回からは監査役の有効性について考えて見ます。

監査役の覚悟20 株主の行動

株式会社を支配し重要事項を決定する株主とは、どういう存在で、その意思決定はどのように行われているのでしょうか。

證券会社の方に聞いたところ、年金を運用している信託銀行や外国の機関投資家の比率が非常に増えているそうです。
実際に、時価総額上位50社の企業の金融機関比率は34%、外国人比率は33%と、合わせて67%にもなります。
それらの機関は、もの言う株主として発言力を強め、特に次のガバナンス向上を求めているそうです。
・社外役員の独立性確保
・役員報酬における報酬決定プロセスの開示
・株式持合い、買収防衛策、株主還元
また、機関投資家はウォーレン・バフェットのように、社会や環境への貢献を求める投資哲学を持っており、その哲学に共鳴した投資家から資金を集めて長期的に運用することから、コンプライアンスの遵守は大前提になるとの事でした。
日本における機関投資家は、プロが運用していると言うよりは、サラリーマンとして運用しているのでリスクは取らない、つまりコンプライアンスに問題のある企業については絶対に組み入れない、との事でした。

一方で、ヘッジファンドが巨大化しており、2010年末の世界の運用資産残高は1兆9千億ドル、つまり170兆円もの金額が短期的に取引されている事になり、その額は10年間に6倍以上に膨らんでいます。
取引はコンピューターが判断して売り買いをするため、先行き上がると判断すれば買いを入れ、下がる予想が立てば即座に売られる事になります。
 日本での株式売買も、現金取引が44%に対し、信用取引が56%と、信用取引の方が多くなっています。また、東証のシステムも昨年よりアローヘッドという超短期売買が可能な高速なシステムになっています。
 つまり、コンプライアンスなどは関係なく、上がるか下がるかの予想が売り買いの判断です。
特に信用取引になると、現実に株を保有していなくても売買できますので、下がると判断すると空売りして下がった所で買いを入れて、その差額で大きく儲けるという事になります。
つまり企業価値の向上だけでなく、下落も収益に繋がるわけです。 
 これって、企業価値をひたすら向上させようと日々努力している経営者にとって、そしてその経営がひたすら努力されている事を見ている監査役にとって、とても空しい事ですね。

 しかし幸いな事に、株主総会でもの言う株主は前述の長期的な投資を行う機関投資家であり、企業価値向上が求められている事は変らないようです。
 ただ、機関投資家は時価総額100億円以下の企業には投資しないため、そういった企業に対する外部からの牽制は効き難く、社長のワンマンコントロールになりやすい、との事でした。

監査役の覚悟19 株主の権利

 そもそも株主の権利って何なのかを整理してみる。

株主総会議案の決議&承認
 株式会社は株主のものであり、会社の重要事項は株主が株主総会において決定します。
その意思決定は、過半数を有する株主が出席した株主総会で、過半数(特別決議は2/3以上)を持って決議されます。(309条)
 株主総会で決定される重要事項は、業務を委任する役員及び会計監査人の選任(329条)解任(339条)、資本金・準備金の減少・増加(447~451条)、剰余金の配当(454条)、定款の変更(466条)、事業譲渡、解散(467~473条)、計算書類の承認(438条 会計監査人設置会社は報告439条)などです。

株主総会の招集
定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に召集されますが(296条)、3%以上の株式を6ヶ月間以上保有している株主は、株主総会の招集を請求し、それでも召集されない場合は裁判所の許可を得て自ら召集することが出来ます。(297条)
 株主が召集した実例を探すと、請求した事例は多くありますが、実際に開催されたのは次の例しか分かりません。
S社 取締役3人の選任」 株主からの株主総会召集請求に対し、取締役会で否決後、裁判所の許可を得て召集。

株主提案
 1%以上の株式又は300個以上の議決権を6ヶ月以上保有する株主は、一定の事項を株主総会の目的とする事を8週間前までに請求する事が出来ます。(303条)
この実例は数限りなくあり、採用された提案も前回に紹介したとおりです。
 1%未満株主も総会の場において、総会の目的事項に関して議案を提出するが出来ます。「議長 動議!」というやつですね。(304条)

検査役の選任の申し立て
 1%以上の議決権を有する株主は、株主総会の召集手続き、決議の方法を調査する検査役の選任を裁判所に申し立て出来ます。(306条)
 株主が検査役選任を申し立てた事例として「H社 取締役3名解任&選任の件」がありますが、会社と株主が対立関係にある時に白黒を公正に付けたいと言うことから、「B社のように会社が選任」することの方が多いようです。

業務の執行に関する検査役の選任
 3%以上の株主は、不法行為や定款違反の疑いがある時は、裁判所に対し検査役の選任を申し立てすることが出来ます。(358条)
 実例として、「I社の検査役選任申し立てされた事例」がありましたが却下されています。

閲覧等の請求
 株主は、営業時間は議事録の閲覧を請求できます。(318条)
 株主は、その権利を行使するため必要がある場合は、裁判所の許可を得て取締役会議事録の閲覧を請求でき(371条)、3%以上の株主は営業時間に会計帳簿の閲覧を請求する事が出来ます。(433条)

以上のように、会社の意思と行動は株主が決定する訳ですが、そうならば会社の永続的な発展を願い、環境変化がどのようにあろうと支えていくべきだと思うのでが、実際には株価が上がると思えば買い、下がると思えば売ると言う自己の利益を考えて行動するのが実態です。
次回は監査役を委任する立場の株主の行動について検討してみたいと思います。

プロフィール

新米監査役

Author:新米監査役
常勤監査役を7年間勤めさせて頂きましたが、平成28年6月の株主総会で退任しました。
監査役として悩み検討したことを「監査役の覚悟」を7人の共著で出版させて頂き、感謝しております。
なお、現在は某社の非常勤社外取締役と某校の非常勤監事を務めており、経営のあり方について考える立場にある事、「監査役の覚悟」で「新米監査役のつぶやき」管理人と自己紹介している事から、このブログを継続させて頂きます。
ブレーキはより速く走るためにある、とシュンペーターが言ったように、企業の永続的発展のために、監査・監督について、今後も考えていきたいと思います。
ご指導の程どうぞよろしくお願いします。

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常勤監査役を7年間勤めさせて頂きましたが、平成28年6月の株主総会で退任しました。
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