北海道拓殖銀行の経営破綻に学ぶ

古い話題で恐縮だが、経営判断の原則の観点から、拓銀の破綻について改めて振り返ってみる。

経緯の概略
1899年 北海道開拓を進めるための国策銀行を作る北海道拓殖銀行法制定
1900年 北海道拓殖銀行が設立され、道内産業に長期・低利の融資を開始
1950年 拓銀法が廃止され、特殊銀行としての使命を終える。
1955年 全国地方銀行協会を脱退し、都市銀行となり、道民銀行としての地位を確立
    慣例として拓銀4、北海道銀行3、北洋銀行2、札幌銀行1
1988年~鈴木会長、佐藤副頭取、海道常務のSSKトリオがワンマン体制を作り拡大路線を推進
    不動産融資を本格化したが、後発のため担保順位が劣後
    カブトデコム(佐藤社長)のリゾート建設「ホテルエイベックス洞爺」やソフィア中村チェーンの健康リゾートホテル「札幌テルメ」や巨大ショッピングセンターなどの開発に潤沢な融資を行うとともに行員を派遣。
1992年 カブトへの融資は2800億円+債務保証1000億円以上だが、実質債務超過状態
    SSKトリオが退任
1994年 大蔵省検査でソフィアグループ向け融資に対して指摘されるが、その後も100億円の融資を継続
    週刊現代に「拓銀解体の衝撃シナリオ」が掲載され、預金引き出しが増大
1995年 ムーディーズからEランクの格付け(非常に弱い財務内容・何らかの外部の支援を要する)
1997年 道銀との合併を発表するも、拓銀は合理化策を飲まず、合併は白紙撤回される。
    預金額は8兆4千億円から5兆9千億円にまで落ち込み、資金調達が困難に。
    札幌銀行への営業譲渡も拓銀が拒否
    11月15日北洋銀行への営業譲渡、1998年11月10日営業終了が決定
    11月24日拓銀の主幹事の山一證券も自主廃業を発表(実際は1999年に破産)
1998年 道外支店を中央信託銀行に営業譲渡
1999年 不良債務は貸出金残高5兆9千億円の約4割にも及ぶ2兆3400億円と発表
2008年 北洋銀行と札幌銀行が合併し新たな北洋銀行に

北洋銀行の対応
1997年11月17日取締役会で、武井頭取は「議事録に反対意見が記録されていれば株主代表訴訟では免責される。反対するなら正直に反対して欲しい」と述べたとされる。
また、拓銀営業譲受を不安がる北洋行員向けの説明会で、武井頭取は「相手が都銀だったからといって、(第二地銀である)自分たちを卑下する必要は全くない。何故なら拓銀は無能だから潰れたんだ」と語っているそうだ。
システムも普通は存続会社のシステムに統合するが、「システム変更に伴う設備導入費用や改修費用をはじめオペレーターの再教育にかかる費用等を考慮しても、日本で一番進んでいる拓銀のシステムに乗り換えた方がベター」として拓銀システムに統合するなど、敬服に値する行動を取っている。

刑事罰
2009年 最高裁で2審判決(頭取山内、河谷は2年6ヶ月、融資先ソフィアグループ中村社長は1年6ヶ月の実刑)が確定し、札幌刑務所に収監
損害賠償
2008年 最高裁は「破綻時期を数か月遅らせるに過ぎず、担保評価も実態と掛け離れ著しく不合理な判断だった」と指摘し、RCCの請求する全額計60億円の支払いを命じる判決を下した。この結果、元役員13名に対する損害賠償請求額は101億円となった。
最高裁は次の点での善管注意違反を認めている。
・貸付を行った取締役の判断について,判断の基礎となった資料が口頭の報告等であったこと,その他の客観的な資料を検討していなかったことから,極めて緊急の状況における判断であったことを考慮しても,これが著しく不合理であった
・拓銀が追加的な貸付を行う際に担保として差出された株式の価値の下落のリスクを回避するための方策等の検討を十分に行っていない
・対象企業への倒産回避の目的での貸付は当初から回収の見込みがなかったこと,対象企業のその後の事業の採算性にも疑問があったこと,従前から取引が継続していたとしてもせめて個別のプロジェクトごとに融資の可否を検討すべきであったこと,その他十分な資料の検討がなされていないことから,融資の決定は著しく不合理であった

経営判断の原則
①事実認識に重要かつ不注意な誤りがないこと
 破綻が分かっている企業に追加融資を行うのは、不注意な誤りというより故意でしょう。
②意思決定過程が合理的であること
 危ない場面では口頭での報告で審査体制も手を抜いていた、のはガバナンスの欠如。
③意思決定内容が法令又は定款に違反していないこと
 都市銀行の頭取が実刑を受け、収監されたことからして真っ黒。
④意思決定内容が通常の経営者として明らかに不合理でないこと
 北洋銀行の頭取だったら、どんな判断だったのでしょうか
⑤意思決定が取締役の利益または第三者の利益でなく会社の利益を第一に考えてなされていること
 追加融資は明らかに自分の身を守るためでしょう
もっとも、犯罪と分かっていながら、会社を守るためという錦の御旗を立てて(実際は自分の身を守るために)やるのだから、経営判断の原則に合致するはずが有りませんね。

参考 ウィキペディア北海道拓殖銀行
日本銀行総裁談話   

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新米監査役

Author:新米監査役
常勤監査役を7年間勤めさせて頂きましたが、平成28年6月の株主総会で退任しました。
監査役として悩み検討したことを「監査役の覚悟」を7人の共著で出版させて頂き、感謝しております。
なお、現在は某社の非常勤社外取締役と某校の非常勤監事を務めており、経営のあり方について考える立場にある事、「監査役の覚悟」で「新米監査役のつぶやき」管理人と自己紹介している事から、このブログを継続させて頂きます。
ブレーキはより速く走るためにある、とシュンペーターが言ったように、企業の永続的発展のために、監査・監督について、今後も考えていきたいと思います。
ご指導の程どうぞよろしくお願いします。

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