東アジア「共生」学

2月13日(日)~14日(月)に、富山大学主催の東アジア共生についてのシンポジウムが開催され、初日に出席した。

金泳鎬(韓国柳韓大学総長)
・夏しか知らない蝉は、夏も知らない。
・現在しか知らない人は過去も現在も知らない。(歴史を学ぶ大切さ)
・日本はクジラだが、井戸の中で泳いでいるために閉塞感(海に出でよ)
・飛ばないと道に迷う。
・過去の負の資産を未来の正の資産にする道は開かれている。
・領土問題は軍事的に解決することは出来ない。
・紛争の種を協力の種にして行こう。独仏は共同で歴史教科書を編纂し解決した。
・G2(米×アジア)ではなく、米vs東アジア共同体とすべき。
・異なること、異なるものが美しい。(異文化を積極的に受け入れて行こう)

歩平(中国社会科学院近代史研究所)
・「共生」はギリシャのアリストテレスが提出した概念。
・各国とも「共生」の立場に立って、食料や水、気候と気温、エネルギーや安全などの問題を地球規模の問題として考えなければいけない。
・「華夷秩序」(中華思想)・・強大で富裕な中国と相対的に弱い周辺地域・・は共生関係とはいえない。
・大東亜共栄圏も日本が地域の中心という考えであり、共生とはいえない。
・現在東アジアだけで10ほどの地域協力メカニズムが存在
・「地理の壁」「歴史の壁」「アイデンティティーの壁」は崩れ始め、地域統合の動きが活発化。
・しかし、戦後数十年経っても心の溝は依然として埋められていない。
・歴史問題についての対話は「政治判断」「民衆感情」「学術研究」の3点が重要
・ドイツとフランスが共同で教科書「1945年以後のヨーロッパと世界」を編纂した努力と成果は、成功例
・日中韓共同歴史編纂委員会も2005年に「未来を開く歴史-東アジア三国の近現代史」を出版
・自国から周辺地域へ視点を拡大する「同心円史観」ではなく、「東アジア的史観」の概念が大切
・国境を越える歴史認識を構築する過程において「越える」という事が大変重要な概念。

毛里和子(早稲田大学名誉教授)
・「地域」とは共通の世界観を持っている範囲だが、地域は作られ伸び縮む。
・アジアは一つの地域か。機能的に制度的に政治的に空間的にアジアは地域たるか。
・国債地域公共財として国境をまたぐ交通・情報通信・エネルギー・食料・気象・犯罪防止・防災などの地域・国際的な機関が求められる。
・地域の共同作業によって地域公共財を共同で提供することにより東アジア・コミュニティーを形成
・インドが世界のGDPの32%を占めていた時代もあり、中国が33%のときもあった。中心は変って行く。
・中国の発展モデルは低人権、低福利、低賃金により成立ち、模範たり得ない。
・東アジア新地域主義は市場アイデンティティにより現実的に形成されていく。

グレンD.フック (英国シェフィールド大学)
・日本は平和な国だが、朝鮮戦争でもベトナム戦争でもアメリカを間接的に応援した。
・日本は経済大国で東アジアの発展に貢献したが、公害も輸出した。
・広島長崎の被害者意識が強く、東アジアでの加害者意識は低い。
・東アジアと言う意識は低く、アメリカとの関係を重視。好きな国 米18%、中国2%、韓国2%
・尖閣諸島や竹島問題はあるが、「共生」を進める事は、領土問題をも解決する(落ち着かせる)。
・ヨーロッパの例でも、努力と時間によって、ヨーロッパという大きなアイデンティティを形成した。
 富山大学の森川教授より、次のコメントを頂きました。
 HOOKの発言でユニークだったのは、総括セッションでの発言でした。
 1980年代に経済摩擦が頂点に達した日米関係では、「相互理解」がキーワードに浮上し、双方の対話と交流を模索しようとした。現在のアジアでも「相互理解」がまったく欠如しているし、(歴史認識問題や戦後処理問題、領土問題があって)難しい。だから「共生」という東洋哲学の概念をみんなでひっぱりだしているのではないか?
 ある意味で覚めた分析です。0=無限大。否定=肯定。これをどうやって社会科学に応用し実際の政策に結び付けるのか?非常にベーシックな定義の次元での整理もできず、議論されない状態で、「共生」「交響するアジア」「ビバルディの四季のようなアジア」を喧伝するのはある意味、楽観的で研究者としては無責任な話です。ismが先行した70~80年前とはまったく逆で、ismのないまま上滑りな地域。それが現代の東アジア。そんな批判もHOOK発言から読み取れます。


下斗米伸夫(法政大学法学部教授)
・アジア55年体制からの脱却について語られたのですが、ついて行けなかった・・・薄学を反省
・ソビエト、ロシアと北方領土問題解決のタイミングは何度か合ったが、中東紛争などで飛んだ。
・アメリカも日本がロシアと平和条約を結ばせないため、曖昧なままとした。
#下斗米氏の1955年体制
 国際政治学では、パワー(力:軍事力、経済力、外交、国民の動員力、資源などを総合したもの)の分布で国際関係や国際秩序が決定するという考えが基本にあります。そのパワーの分布がまったく変化のない状態を「現状維持」(status quo)と定義し、二極のパワー均衡がもっとも安定した国際秩序とみなしてきました。アジアは第二次大戦後、戦前期日本の拡張した海外領土の処理(戦後処理)と蒋介石政権によって大国中国を建設させこれを支援して新しい国際秩序を建設することで米ソが合意のもとにスタートします(戦後の中ソ同盟の中は蒋介石政権です)。そのシナリオは、中国革命と朝鮮戦争によって「二つの中国」「二つの朝鮮」に分断されることによって崩壊します。これが1955年体制と呼んでいます。それ以来、グローバルな冷戦が終結しても、アジアは1955年体制の
「現状維持」が続いています。
 下斗米氏は、アジアは「現状維持」の秩序が多極化に向かい変質しているという見方から、1955年体制後のアジアにおける新しい価値観として「共生」に言及した内容になっていました。


鈴木規夫(愛知大学国債コミュニケーション学部長・教授)
・この先生の話も付いて行けなかった・・・・反省
・西洋的な優れた文化価値をもう一度東洋によって包みなおす。
・東洋の力が西洋の生み出した普遍的な価値をより高めるために西洋を変革する。
・東アジアの強制のためにはイスラム ムスリムとの共生が欠かせない。
・タウヒード 不可分な単一な実体 VS 多様性の概念が必須
#鈴木氏
 難解ですが、次のように解釈されれば少しは理解可能かもしれません。
 一即多、多即一。鈴木氏のパワーポイントの副題に禅宗の用語が使われていましたが、 仏教(禅宗)や道教(taoism)の哲学概念とイスラーム政治哲学の類似している点に着目し、アジアの「共生」という概念を整理しようとしていました。
 この発想は、戦前の大東亜共栄圏の前身となった東亜協同体論とほとんど同じです。戦前のアジア主義では、東洋思想を哲学として体系化しようとした西田幾多郎を中心とする京都学派の哲学が根拠になったといわれております。「一が多」で「多が一」、「自己と他者が分離できない」、「無=無限大」などという「絶対無」の世界は高校までの論理式では表現できませんし、西欧の科学哲学とは根本から相容れない。京都学派は、自己を限りなく否定していくと、この絶対無の場所にたどりつく。
 この自己否定のネットワークを世界大に広げていくことで、いままで世界を支配してきた西欧が東洋と対立するのではなく、東洋が西欧の思想や科学を包みこむように新しい哲学が完成し、新しい世界史の一歩を記すことができるというわけです。
 残念ながら、この思想は難解でかつ先にあげた理由で実証科学に発展させることがむずかしい。そのため、換骨奪胎され、大東亜共栄圏のような軍部の構想に利用されていきました。
 その結果、「共生」の哲学は戦後、政治の色をすべて脱色して自然科学とくに京都大学を中心に環境や農学、生物学に応用されています。
 鈴木氏の報告は、「アジアの共生」という思想と類似のイスラーム政治哲学に範をとり、そうした思想を根底に据えて、政治的な意思をそなえた地域形成を進めるべきとの主張です。思想や哲学的な根拠が希薄な、経済的な利益をひたすら追求する現在の機能的に偏った東アジア共同体を目指す政策構想へのアンチテーゼともいえるでしょう。


東アジアの賢人会議に参加した思いでした。
共通しての話は、共生と言う概念を進めて行こう。お互いの間には紛争はあるが、それを乗り越え共通の認識を持つ事によって共生が実現できる。と言った所でしょうか。
はてさて、先生方の理論を現実的に実現していくために、民間同士の時間を掛けた土着的な交流が求められます。

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新米監査役

Author:新米監査役
常勤監査役を7年間勤めさせて頂きましたが、平成28年6月の株主総会で退任しました。
監査役として悩み検討したことを「監査役の覚悟」を7人の共著で出版させて頂き、感謝しております。
なお、現在は某社の非常勤社外取締役と某校の非常勤監事を務めており、経営のあり方について考える立場にある事、「監査役の覚悟」で「新米監査役のつぶやき」管理人と自己紹介している事から、このブログを継続させて頂きます。
ブレーキはより速く走るためにある、とシュンペーターが言ったように、企業の永続的発展のために、監査・監督について、今後も考えていきたいと思います。
ご指導の程どうぞよろしくお願いします。

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