吉田調書と内部統制

福島第一原子力発電所の吉田昌郎所長(敬称は当時を使用)の調書が公開された。
生々しい記録から学ぶ事が非常に多い。

調書の公開と同時に多くの論評が出されているが、各人に成り代わって言い訳するとすれば、

まず、○首相は現地に自ら出向いて怒鳴り散らした事が非難されていますが、そこに至る気持ちを推し量って代弁しますと
・東京電力から全く情報が入って来ないし、責任者である社長が不在。
・現地の係官は撤退済みなので、原子力保安院からも情報が入って来ない。
・東京電力元副社長からの情報も信用出来ない。
・原子力安全委員長が言う事も、ころころ変って信用出来ない。
・ベントを指示しても実行されないが、その理由、状況が分からない。
・必要な情報が入らないが、首相として住民対策など指示をしなければいけない。
・かくなる上は、自ら現地に行って状況を見て判断するしかない。

朝日新聞が「命令違反し撤退」と報道した事が非難されている。実際、私もこの新聞報道にショックを受けた。
デスクの思いを推察すると、
・(1Fの線量の低い所に)退避せよという指示に対し、2Fに行ったという調書からそう読み取った。
・「良く考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思った」と書いてあるが、吉田所長の当初の思いと違った結果だった事は事実。
・「はるかに正しいと思った」という部分は記事に書かなかったが、言動の一部だけを捉えて記事にするのは、どこのマスコミでもやっていること。
・多くの人に読んでいただくためには、見出しを派手にする必要がある。

津波に耐えうる防潮堤を設置しなかった事に対しては、吉田所長も調書の中で述べています。
・津波自体、国とか地方自治体がどうするのかという話。
・マグニチュード9が来るといった人は、誰もいない。
・中央防災会議で取上げ、市町村も含めて対策をしないといけない。

そうなんです。それぞれの行動は、本人としては、きちんと正当化出来るのです。

しかし、吉田所長の行動は、内部統制から言うと大いに問題です。
・「官邸では海水注入は了解していないので、海水注入を中止しろ」、と言う副社長からの指示を受けて
・部下に、「中止命令をするが絶対に中止しては駄目だ」という指示をした。
・本店には、「中止した」という報告をした。

これは明らかに命令違反であり、報告違反です。
しかし、この吉田所長の違反行為が、日本を救いました。
彼にとっては、その時に守るべきは内部統制ではなく、命を掛けて日本を守ろうとしたのです。

○首相も日本を守るために行動し、怒りまくったのでしょう。
しかし、立場としては、中央で情報を集め、必要な確認と指示をすべきだった。
それが出来なかったのは、機能する内部統制が構築出来ていなかったからです。
何か事が起きると、やたら情報を求めますが、現場をサポートするためよりは、報告のためのものが多いように思います。
有事に真に機能する内部統制体制を構築していきたいものです。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

新米監査役

Author:新米監査役
常勤監査役を7年間勤めさせて頂きましたが、平成28年6月の株主総会で退任しました。
監査役として悩み検討したことを「監査役の覚悟」を7人の共著で出版させて頂き、感謝しております。
なお、現在は某社の非常勤社外取締役と某校の非常勤監事を務めており、経営のあり方について考える立場にある事、「監査役の覚悟」で「新米監査役のつぶやき」管理人と自己紹介している事から、このブログを継続させて頂きます。
ブレーキはより速く走るためにある、とシュンペーターが言ったように、企業の永続的発展のために、監査・監督について、今後も考えていきたいと思います。
ご指導の程どうぞよろしくお願いします。

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール

新米監査役

Author:新米監査役
常勤監査役を7年間勤めさせて頂きましたが、平成28年6月の株主総会で退任しました。
監査役として悩み検討したことを「監査役の覚悟」を7人の共著で出版させて頂き、感謝しております。
なお、現在は某社の非常勤社外取締役と某校の非常勤監事を務めており、経営のあり方について考える立場にある事、「監査役の覚悟」で「新米監査役のつぶやき」管理人と自己紹介している事から、このブログを継続させて頂きます。
ブレーキはより速く走るためにある、とシュンペーターが言ったように、企業の永続的発展のために、監査・監督について、今後も考えていきたいと思います。
ご指導の程どうぞよろしくお願いします。

月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード