IFRS  連結と個別会計(田中弘教授より)

月刊監査役11月号 新任監査役のための「早分かり」会計講座 を執筆されている神奈川大学経済学部田中弘教授にメールで質問したところ、次の回答を頂きました。かなりリスクがありそうです。

質問内容
今回も分かりやすい講座をありがとうございました。
質問ですが、連結にIFRSが適用されるとしても、個別は税務会計上、今のままだとお聞きします。
そうすると、個別決算を合計しても連結にならないため、セグメント情報も得られなくなるのでしょうか。
それとも、個別は出した上で、連結用の個別決算資料も付けるといった事になっていくのでしょうか。
特に、電気事業の場合は減価償却の年数も方法(定率or定額)も個別と連結で違うとすれば、非常に分かりにくくなることが心配されます。
例えば、個別では赤字だが、連結では大黒字といった決算になりかねない。
そういう時の配当政策はどう考えればよいのか。

素人にIFRSって、こんなだよ、こんな問題があるからこうして置かなければいけないよ、といった事を分かりやすく教えていただければ幸いです。

頂いた回答

メールを拝受しました。今回もお読みくださり、ありがとうございます。

金融庁の連結先行論では、

IFRSの導入時点では、
 金商法会計 連結(IFRS)、個別(日本基準)
 会社法会計 連結(IFRS)、個別(日本基準)
 法人税法会計 個別(日本基準)

その後、
 金商法会計 連結(IFRS)、個別(IFRS)
 会社法会計 連結(IFRS)、個別(IFRS)
 法人税法会計 個別(IFRS)

に移行することを想定しています(2009年6月16日、企業会計審議会「我が国における国際会計
基準の取扱いについて」)。しばらくは2重帳簿を用意しないと決算できないでしょう。

日本の税法は確定決算主義を取っていますから、現在の法制度では、会社法会計がIFRSなら、税法会計もIFRSを適用する・・・というのが金融庁の言い分でしょうか。そんな言い分が、法務省(会社法管轄)や財務省・国税庁(税法管轄)にも通用するとは思えませんが。

税法は、納める財源の無いようなものには課税しないのが原則です。固定資産課税でも、固定資産からの収入(地代など)がある(あるいは、固定資産を所有していることによって、地代を払わないで済んでいるという意味での収入)から課税が成り立っていると思います。

IFRSでは、評価差益が包括利益として報告されますから、これをベースに課税所得を計算すれば、キャッシュの裏付けのない利益に課税することになりかねません。それよりも、課税という各国国家の権限を、今後はロンドンが握ってしまう危険があります。

減価償却は大変だろうと思います。電力会社の設備もこれまでとは違って、構成要素ごとに細かく原価を分けて、残存価額、耐用年数を決めて計算することになりそうです。よく知られた事例では、飛行機は、これまでのように一体で償却するのではなく、エンジン、胴体、ウイング、座席・・・などと分けて
償却します。胴体は耐用年数が終わったけどエンジンはまだ10年も残っている・・・という事態になりかねません。

日本ではこれまで、連結は単なる情報(株主総会で議決されることはない)で、配当や課税は個別をベースとする(個別は決算情報)としてきました。この考えが(連結しか公表しない)諸外国でも通用するかどうか、わかりません。いずれ日本も連結しか公表せず、個別は株主総会に提出するだけになるかもしれません。

長くなりましたが、いずれこうしたこともどこかで書きたいと思います。
また、メールをください。            神奈川大学  田中 弘

テーマ : ビジネス
ジャンル : ビジネス

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

新米監査役

Author:新米監査役
常勤監査役を7年間勤めさせて頂きましたが、平成28年6月の株主総会で退任しました。
監査役として悩み検討したことを「監査役の覚悟」を7人の共著で出版させて頂き、感謝しております。
なお、現在は某社の非常勤社外取締役と某校の非常勤監事を務めており、経営のあり方について考える立場にある事、「監査役の覚悟」で「新米監査役のつぶやき」管理人と自己紹介している事から、このブログを継続させて頂きます。
ブレーキはより速く走るためにある、とシュンペーターが言ったように、企業の永続的発展のために、監査・監督について、今後も考えていきたいと思います。
ご指導の程どうぞよろしくお願いします。

FC2カウンター
最新記事
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール

新米監査役

Author:新米監査役
常勤監査役を7年間勤めさせて頂きましたが、平成28年6月の株主総会で退任しました。
監査役として悩み検討したことを「監査役の覚悟」を7人の共著で出版させて頂き、感謝しております。
なお、現在は某社の非常勤社外取締役と某校の非常勤監事を務めており、経営のあり方について考える立場にある事、「監査役の覚悟」で「新米監査役のつぶやき」管理人と自己紹介している事から、このブログを継続させて頂きます。
ブレーキはより速く走るためにある、とシュンペーターが言ったように、企業の永続的発展のために、監査・監督について、今後も考えていきたいと思います。
ご指導の程どうぞよろしくお願いします。

月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード