経営を監視する監査役

別府正之助氏の「経営を監視する監査役」(平成21年11月同文舘出版)に学ばせて頂く。
独立役員が東証から求められ、社外監査役の義務化が議論されるなど、ガバナンスのあり方について大きく変わろうとしている現在、アンケートや別府氏の経験と識見からのまとめられた当書は時宜を得たものといえる。

概要は;
 エンロン事件において、CEO以外の15名の社外取締役はお飾りに過ぎなかった事、社外取締役6名で構成される監視委員会も形だけだった事、内部監査部門もアウトソーシングされ会社を良くしようという志も使命感もなかった事、会計監査人がコンサルタントを兼務していた事、など制度上は大層重厚だが、全く機能していなかった事実から、制度変更によるガバナンス向上効果に疑問を呈する。
 制度的には、会社法において、「監査役は取締役の職務の執行を監査する。」に加え、「取締役会は取締役の職務の執行の監督を行う。」となっている。
 しかし、重要事項の「決定」と「執行」にあたる取締役会が自ら「監督」するのは、サッカー選手が同時にレフリーをするようなもので、実効は期しがたい。
 取締役会は「決定」と「執行」を担い、監査役および監査役会が「監督」の任務を担うのが自然である。
 社長アンケートでも、ほとんどの社長は自分へのお目付け役が必要であり、監査役(会)をトップの監視・牽制機関として企業に不可欠な独立機関と考えている。

 しかし、監査役制度は日本独自の制度であり、外国人株主に理解されにくい。会計監査人による外部監査、内部監査部門による内部監査、に対する監査役監査の位置づけが分かりにくいのだろう。
 専門的な訓練も受けておらず、資格もなく、監査の規則や手順書もない、スタッフも少数、議決権もない監査役がどうして有効な監査できるのか。
 監査役の英語名の「Corporate Auditor」も内部監査部門と誤解される。
 しからば、米国のように委員会設置会社に移行すべきかと言えば、2003年より制度的に可能となっているが、上場会社の2%、大会社の1%しか移行していない。しかも委員会制度に移行した会社においても、取締役は執行役を兼務しており、執行役が監査委員会のメンバーになっているのが現状だ。
 日本では社長は社員から選ばれるなど当事者意識の極めて強い役員・社員が力を合わせて会社を経営しており、社外取締役中心の経営体制に強い違和感があることが原因と思われる。

 日本型ガバナンスとして大切なのは、①CEOの正しい経営姿勢 ②経営監視システムの構築 ③活発に議論する取締役会 ④経営を監視する監査役会 ⑤CEO直轄の内部監査部門 ⑥不正経理を防止する会計監査人 の運営如何に掛かっている。

 監査役は、感謝のために働きCEOを監視する覚悟を肝に銘じ、CEOと定期的に面談し、経営監視を行っていく。また、自己評価と自己研鑽を行い、取締役会に報告し、有効性を高めていくべき。


 今、監査役に求められているのは’知識’よりも’覚悟’である。という帯にはどきっとさせられる。
 欧米の制度は、取締役は監督する人であり、執行する人ではない。欧米は個人が責任を持ち、日本は合議制が前提であり、協調協力して物事を推進する。
 欧米と日本では根本的に社会文化が違っており、背景の文化が違うのに制度だけ真似ても意味も効果もない。
 ただし、現在の制度が日本の文化に根ざした効果的なガバナンスだと言っても、黙っていても理解してくれるのは日本の中だけであり、欧米には通じない。諸外国にもきちんと説明していく必要がある。
 公開会社法が検討されている現在、日本的ガバナンスのあり方をきちんと論理立てて議論し、整理した上で、国内外にアッピールしていくべきだろう。

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新米監査役

Author:新米監査役
常勤監査役を7年間勤めさせて頂きましたが、平成28年6月の株主総会で退任しました。
監査役として悩み検討したことを「監査役の覚悟」を7人の共著で出版させて頂き、感謝しております。
なお、現在は某社の非常勤社外取締役と某校の非常勤監事を務めており、経営のあり方について考える立場にある事、「監査役の覚悟」で「新米監査役のつぶやき」管理人と自己紹介している事から、このブログを継続させて頂きます。
ブレーキはより速く走るためにある、とシュンペーターが言ったように、企業の永続的発展のために、監査・監督について、今後も考えていきたいと思います。
ご指導の程どうぞよろしくお願いします。

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