不祥事における事実公表責任について 「ビジネス法務の部屋」より

山口弁護士の過去ログをまとめた本「ビジネス法務の部屋」(2009.9.30大阪弁護士協同組合)を読ませて頂いた。
大変勉強になり、自分として整理のため感想を少々書いて行きたい。

2006年6月のブログ「内部統制システム構築と取締役の責任論」でダスキン株主代表訴訟について述べておられます。

事実関係
 ダスキンの子会社ミスタードーナツは、中国の下請工場で「大肉まん」を作らせて販売していたが、平成12年終わりころに、日本で未認可の添加物が含まれていることが発覚し、担当取締役らはこれを知りながら在庫品を全て販売してしまった。
 その半年後には、(関係当事者による業務担当取締役への恐喝事件なども発生したことから)社内で問題が大きくなり、全ての取締役、監査役の知りうるところとなった。
 しかし、取締役会では、社内処分を決めただけで、もう販売もしていないし、消費者になんらかの被害報告も出ていないから、という理由でそのまま放置する方針をとった。
 平成14年4月ころに匿名の告発が厚生労働省になされ、直ちに共同通信社の知りうるところとなり、会社ぐるみの隠蔽が報道され、その後ダスキンは正式に記者発表した。

高裁判決
 「販売が終了して流通する商品がなくなり、消費者に違法添加物による被害が認められないとしても、取締役や監査役らには、公表すべきかどうか判断する必要があり、十分な検討をすることもなく、消極的に事実を隠蔽したのは、善管注意義務違反にあたる」とし、取締役会を構成する取締役や監査役に各2億円あまりの損害賠償責任を課した。

山口弁護士の見解
 原告株主が主張している内部統制システム構築義務違反の事実は、高裁は認めなかった。
 会社の重要事実を取締役会で共有するシステムが不全だったとか、行動規範が具備されていなかったといった問題が論じられているわけではないので、取締役の善管義務と経営判断の法理の関係で議論すれば足りると考えています。
 では善管注意義務のひとつとして、取締役に不祥事の「公表義務」が認められたと評価すべきなのでしょうか。
 高裁判決は、「将来発覚することは確実に予想されていた」のに「事実を公表しない」といった方針を決めてそのまま放置していたことは、会社の損害回避のための措置を怠ったといわざるを得ず、善管注意義務違反を認めることができる、とされております。
 逆に言えば、もし将来的に企業不祥事を公表しないことによって、そのまま企業不祥事を「うやむやにできる」ことが状況として「あり得る」ならば、これは「リスク管理の問題」となりますから、「積極的には公表しない」といった判断も会社の損害回避のための一手段としては検討に値するものである、と読めます。
 純粋に考えてみますと、取締役は会社から株主価値を最大化するために委任を受けて業務を執行しているわけですから、たとえ企業の存亡に関わるような企業不祥事が発生したとしても、それが隠し通せる可能性のあるものであれば、「墓場までみんなで持っていく」ことが違法とは言えない場合もありうる、ということも考えられるのではないでしょうか。その場合、私が社外役員として企業不祥事を公表した場合、私は企業の株主から善管注意義務違反として代表訴訟を起こされてしまうことになるんでしょうか?

感想
 要するに、違法行為を発表せずにばれた場合は違法行為だけでなく隠蔽行為と対応の遅れに対して善管注意義務違反を問われるが、絶対にばれないのだったら隠し通すのが株主のためにも良い、と言う事なのでしょうか。
 しかし、一人が秘密を一生抱え込むことは自分を管理すれば足りますが、他の人に知られた事実は自己管理不能です。その人が信用できるから、と言ってもそれは現在のことであり、未来永劫その関係が維持出来るとは限りません。
 ましてや取締役会全員が知っている状況というのは、社員にもかなり知られていると言うことで、隠蔽は不可能だと判断すべきです。
 よって、不祥事案件が取締役会に出てきたり、監査役に知られた時点で、それはもう隠し様が無いと判断して最善の対策を迅速に採るべきだと思います。

 もっとも山口弁護士も隠せるものは隠し通せと言われているのではなく法律論を言われている訳で、「例えそれを公表することで企業の存続が危ぶまれるような不祥事であったとしても、入念な準備をしたうえで自ら積極的に公表して、消費者や投資家からもう一度信頼を回復する機会を与えてもらう「わずかのチャンス」に賭けるべきであり、「墓場まで不祥事を持っていく」ことは到底、取締役の行動としては許しがたいものであると思っておりますし、私が社外役員たる立場にあれば、そのようにご指導申し上げることは間違いないと思います。」
 と仰っておられますので、不祥事は当然公表し、適確な対応を迅速にすべしという立場は同じだと思います。

参考
 嘘は15の2乗で増える。
 約三十の嘘 一つ大きな嘘をついたら三十個の小さな嘘をつかないと成立しないのさ
 

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新米監査役

Author:新米監査役
常勤監査役を7年間勤めさせて頂きましたが、平成28年6月の株主総会で退任しました。
監査役として悩み検討したことを「監査役の覚悟」を7人の共著で出版させて頂き、感謝しております。
なお、現在は某社の非常勤社外取締役と某校の非常勤監事を務めており、経営のあり方について考える立場にある事、「監査役の覚悟」で「新米監査役のつぶやき」管理人と自己紹介している事から、このブログを継続させて頂きます。
ブレーキはより速く走るためにある、とシュンペーターが言ったように、企業の永続的発展のために、監査・監督について、今後も考えていきたいと思います。
ご指導の程どうぞよろしくお願いします。

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