包括利益のねらい?

神奈川大学の田中教授に頂いた「純利益廃止論の真の狙い」(田中教授 金融財政ビジネス4月5日号)は驚きだ。

国際会計基準審議会(IASB)は当期純利益を廃止し、包括利益に一本化することを目指している。
それは含み益のある株などの資産をいつ売るかによって利益の計上時期を恣意的に操作出来るからだと理由だ。
当期純利益は「実現した利益」「キャッシュフローの裏付けのある利益」「分配可能な利益」である。
純利益には含まれないが包括利益に含まれる「その他包括利益」は「未実現利益」であり、利益だとこじつけられる項目は何でも含まれてしまう可能性がある。
例えば、エンロンが何年も先の「契約上の利益」を前倒しで計上したが、工場を建設しただけでそこで生産する将来の製品の利益を前倒しで計上することも許されるかも知れない。
市場価格の無い有価証券などの時価評価は「経営者が合理的と考える金額」であり、「マーク・ツー・マーケット」と言いながら「マーク・ツー・マジック」なのである。

フランスのサルコジ大統領は1月に開催されたダボス会議で投機的な金融を批判している。
「金融資本がほとんど全てを手にし、勤労者には何も残らない世の中になり、不労所得で富を得るものと勤労者の格差が大きく広がった。新たな形の資本主義は、他人の金でリスクをとることが当たり前となり、手早く手軽な利益をもたらしたが、繁栄や雇用にはほとんど繋がらなかった。現在が全てで未来などどうでも良くなった。」
さらに時価会計について次のように問題視している。
「資産の価値を株価の上下動に合わせて常に変動する市場会計で定める会計基準も未来を蝕んだ。われわれは金融危機の中でこのような会計原則がもたらした打撃を目のあたりにした。我々の開示システム全体が偽りだった。時価会計の下では経営難に陥った企業が格付けの低下で自身の債務の市場価値が下がったと言って利益を計上できる。その事実を考えただけでこのような会計基準がどれほどばかげたものであるかすぐに分かる。」

田中教授は推察する。
当期純利益を廃止し、包括利益に一本化させようとしているのは、「ものづくり」によるまっとうな稼ぎが上げれなくなった英米が、会計をマネーゲームの得意な自分たちに都合の良い「数字合わせゲーム」に変えようと躍起になっているのではないだろうか。
本業でどれだけ儲けたかと言うことよりも、証券市場や金利、為替相場がどう動いたかで企業の業績が左右され、誰も「汗水流してよいものを作って」「知恵を出して売り歩く」事などしなくなり、市場価格が動きそうな資産を保有し、期末近くになれば皆で買い増しすることがビジネスになる。


怖いですねー。再び金融学者たちがバブルを作って資産を増やそうとたくらんでいるのでしょうか。
ものづくりが崩壊すると、人類はレミングの様に破滅に向かって集団自殺するしかないのではないでしょうか。
しかし、どうしても国際会計基準&包括利益がマストならば、推進する先生方に
「そうじゃないよ。包括利益でちゃんと汗水流して働くことが報われるんだよ」、と説明頂きたいものです。

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No title

オリンパスもかかる、かかからないか
過去に某粉飾決算で風説の流布といって叩かれた企業があるが、
フジテレビでも木村、安藤、滝川の報じた内容は、
フジテレビ自体が、風説の流布と思われ、逮捕の可能性すら見える。
フジテレビの株主の損失すら見えうる。
テレビ局にもついにメスが入るか

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新米監査役

Author:新米監査役
常勤監査役を7年間勤めさせて頂きましたが、平成28年6月の株主総会で退任しました。
監査役として悩み検討したことを「監査役の覚悟」を7人の共著で出版させて頂き、感謝しております。
なお、現在は某社の非常勤社外取締役と某校の非常勤監事を務めており、経営のあり方について考える立場にある事、「監査役の覚悟」で「新米監査役のつぶやき」管理人と自己紹介している事から、このブログを継続させて頂きます。
ブレーキはより速く走るためにある、とシュンペーターが言ったように、企業の永続的発展のために、監査・監督について、今後も考えていきたいと思います。
ご指導の程どうぞよろしくお願いします。

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